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泡沫古書店の裏設定
・F-113の物語
F-113はとある作家、『龍丘歌穂』(ローマ字を並び替えるとUTAKATA KOSHO=泡沫姉妹)が書いた作品の登場人物である。
とある国によって開発、製造された殺戮用兵器F型113番。略して『F-113』。
戦闘に特化して作られたため邪魔になるような感情や知識、機能などは持ち合わせていなかった。
当然歌うことも想定されていないため、『歌う』機能自体プログラミングされていない。
ある日とある区画の殲滅任務を言い渡された彼女は、神に祈って歌う少女に出会う。
『歌』というものを知らないF-113は、何故少女がそうしているのかまったくもってわからなかった。
銃口を向けると少女は 「これ、『歌』っていうのよ。今のは神様に祈って歌ったの。戦争が終わりますようにって」 と話しかける。
しかしF-113は、彼女の話に返すことなく、その少女を銃殺した。
時は流れて数百年。 人類が滅び、戦争は各国が開発したアンドロイド同士で行われていた。
その戦争も今、F-113が手にかけた1機で終わりを迎えた。 F-113はなにもなくなった土地を歩いていた。
ふと目に入ったのは、もう何百年も前に任務で立ち寄ったあの場所。
F-113が少女を殺したところには、小さくて簡易的な、木だけでつくった墓が立てられていた。
それを見た瞬間、F-113の口からはあの時聞いた歌が零れ落ちた。
なにもなくなった、ひとりぼっちの世界で、彼女は歌を口遊む。
世界にひとりぼっちになったその日、彼女ははじめて『人』となった。
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